大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 平成11年(行コ)39号 判決 1999年10月06日

控訴人

長谷川登江子

右訴訟代理人弁護士

長谷部成仁

渡部一郎

被控訴人

芦屋税務署長 岡田善章

指定代理人

草野功一

山村仁司

三木茂樹

原田一信

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し平成二年一〇月二四日付けでした納付すべき相続税の本税を二三八〇万八二〇〇円とする更正処分は無効であることを確認する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二本件事案の概要

一  前提となる事実、当事者の主張を含む本件事案の概要は、原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」(原判決三頁二行目から同一四頁末行まで)記載のとおりであるから、これを引用する(但し、文中「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」と各読み替える)。なお、当審における控訴人の主張(控訴理由)の要旨は、次頁のとおりである。

二  本件では、既に法定相続分に従った相続税を完納していた控訴人に対し更に多額の相続税が賦課されるという不均衡が生じたが、この不均衡は、法定相続分に従って納税した相続人に対し、法定相続分に従って審判による分割がなされたにもかかわらず、法三二条一号、五五条但書きによる課税の再調整を許したことによる。右再調整の規定は、共同相続人間における課税の公平を実現するための制度であり、同条項の要件も、右の立法趣旨を考慮し、未分割の財産について、法定相続分の割合に従って課税価格が計算された場合において、その後相続財産の分割が相続分の割合に従ってなされなかった場合と解すべきものである。しかも、布垣ら三名による本件更正請求は、審判による遺産分割で法定相続分に応じて公平な財産の分配を受けたにもかかわらず、不動産の実勢価格と路線価の乖離が甚だしいことを奇貨として、自己の相続税を軽減させ控訴人の相続税額を増加させようとしたもので、権利の濫用であり公序良俗に違反するものであり、右請求に基づく本件更正も重大かつ明白な瑕疵が存し無効というべきである。

第三証拠関係

証拠関係は、原審記録中の証拠関係目録記載とおりであるから、これを引用する。

第四当裁判所の判断

一  当裁判所も、本件相続人らの相続税額の算定方法は、法二二条、基本通達に従ったもので、本件更正は法三五条三項一号、三二条一号、五五条但書きの要件に適合する適法なものであり、これを無効とすべき重大かつ明白な瑕疵は認められないと判断する。この理由の詳細は、原判決の「事実及び理由」欄の「第三 当裁判所の判断」(原判決一五頁二行目から同二六頁末行まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(但し、文中「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」と各読み替える。)。

なお、控訴人は、当審においても本件更正が違法・無効であるとして縷々主張するところではあるが、これらの点については、右引用にかかる原判決がすでに詳細に認定・説示するとおりであり、控訴人の当審主張をもってしても右の判断を左右することはできない。

二  以上の次第で、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 高橋文仲 裁判官 角隆博)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例